ハンザワブログ

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複利計算の間違い。株式の平均上昇率を使用する場合の注意

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こんにちは!ハンザワです。
本日は資産運用についての記事です。資産運用を行っている人の中には、複利運用という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。複利の力は偉大です。しかし、あなたの複利計算のシミュレーション正しく行われているでしょうか。

特に投資対象が「株式」「バランスファンド」「ウェルスナビなどのロボアドバイザー」等の場合、間違って複利計算のシミュレーションをしている人が多いです。

複利とは

最初に複利とは何かを簡単に説明しておきます。一言で言うと「元本だけでなく、利子にも利子がつく」ことが複利です。反対に元本のみに利子がつくことは「単利」と言います。複利の具体的な計算例は下記です。

100万円を預けて1年で5%の複利運用(1年複利)を行なう場合だと、1年目は元本100万円について5%なので5万円の利子。2年目は元本100万円に加えて、1年目の利子(5万円)にも利子がつくため、52,500円の利子。3年目は元本100万円に加えて、今までの利子の合計(102,500円)にも利子がつくため、55,125円の利子になります。

複利計算の仮定が間違っている例

  • 仮定ケース①

「A株式は3年間で15%の上昇しました。年平均の上昇率は5%です。このまま年5%ずつ上昇すると仮定して複利計算で30年後には…」

  • 仮定ケース②

「B株式の過去3年間の値動きは、初年度20%、2年目▲30%、3年目25%です。年平均の上昇率は5%です。このまま年5%ずつ上昇すると仮定して複利計算で30年後には…」

上記の仮定ケース①、仮定ケース②はいずれも「平均上昇率が年5%だから、今後も年5%の上昇で複利計算しよう」というもので、仮定する時によくある「過去がこうだったから、今後もこうだろう」というものです。

このような仮定は色々なサイト(特にブログ)でよく見ます。しかし、仮定ケース①、仮定ケース②は両方とも間違っています。どこが間違っているかわかるでしょうか。

なぜ間違っているのか、具体例での説明

実際の数値を使って説明した方が、わかりやすいと思いますので、仮定ケース①、仮定ケース②、年5%複利で運用したケースを下記表にまとめました。いずれも最初の投資額は100万円としています。

  • 仮定ケース①(A株)の3年目までの運用実績(※1~3年目の運用成績は適当に仮定しました)
  1年目 2年目 3年目
年初の投資金額 1,000,000円 1,100,000円 1,155,000円
上昇率 10% 5% ▲0.4329%
運用損益 100,000円 55,000円 ▲5,000円
運用結果(元本+運用損益) 1,100,000円 1,155,000円 1,150,000円
  • 仮定ケース②(B株)の3年目までの運用成績
  1年目 2年目 3年目
年初の投資金額 1,000,000円 1,200,000円 840,000円
上昇率 20% ▲30% 25%
運用損益 200,000円 ▲360,000円 210,000円
運用結果(元本+運用損益) 1,200,000円 840,000円 1,050,000円
  • 年5%複利で運用したケースの3年目までの運用成績
  1年目 2年目 3年目
年初の投資金額 1,000,000円 1,050,000円 1,102,500円
上昇率 5% 5% 5%
運用損益 50,000円 52,500 55,125円
運用結果(元本+運用損益) 1,050,000円 1,102,500円 1,157,625円

仮定ケース①、仮定ケース②ともに3年目の時点ですでに複利計算と数字がズレていることがわかります。これでは「過去がこうだったから、今後もこうだろう」という仮定の意味を成していません。複利計算に使う仮定の年平均上昇率は、仮定ケース①の計算方法でも、仮定ケース②の計算方法でもダメなのです。

正しくするにはどうしたら良いか?

複利計算の仮定を正しく行うためには、年平均成長率(CAGR)と呼ばれる数値を使わなければいけません。年平均成長率の計算式はややこしいので詳細は割愛します。詳しく知りたい人は下記の参考サイトをご覧ください。

【参考①】CAGR(年平均成長率)とは|MBAのグロービス経営大学院

【参考②】年平均成長率 - Wikipedia

最後に

長期運用のメリットを説明する際に、複利運用の仮定を紹介しているサイトは多いですが、正しく計算されているのか絶対に確認しましょう。運用商品選びでミスリードされないためにも、今回紹介した仮定ケース①、仮定ケース②のような平均上昇率の求め方で、複利計算の仮定を行うのは間違いということを覚えておいてください。

それでは!